スマートフォンの地図アプリは、いつも目的地までの「最短ルート」や「最速の時間」を教えてくれます。
けれど、カメラを提げてバイクで走る日は、効率や速さが一番大切だとは限りません。
今回は、焦らずゆっくりと風景を楽しむための、心と機材に優しいルート選びについてお話しします。
効率や最短距離を手放す。遠回りで見つける静かな並木道
普段の仕事では「いかに効率よく進めるか」を無意識に考えてしまうからこそ、バイクに乗る時間だけは、そのルールの外側へ抜け出したくなります。
幹線道路や大きなバイパスは確かに目的地へ早く着きますが、大型トラックの波に混ざって走るのは少し緊張しますし、せっかくの景色もものすごいスピードで後ろへと流れ去っていくものです。
だから私は、ナビが示す太い青線をあえて無視して、川沿いの細い旧道や、少し遠回りになる並木道を選ぶようにしています。
道幅が狭くても、車の通りが少ないルートを選ぶこと。
それは、予期せぬ段差でカメラに強い振動を与えないための工夫でもあり、気になった瞬間にいつでも安全に足を着けるという、心の余裕にも繋がっています。
日常の給油さえも美しく。ガソリンスタンドで切り取る光と影
心に優しいルート管理をしていると、移動の途中にある「単なる用事」も、ひとつの撮影スポットとして楽しめるようになります。
その代表的な場所が、街の小さなガソリンスタンドです。
少し日が傾きかけた時間帯、無機質なコンクリートの床に、給油機の長い影が落ちる風景。
オレンジ色の夕陽と、蛍光灯の青白い光が混ざり合う空間は、どこか映画のワンシーンのような静かな美しさを持っています。
タンクにガソリンが吸い込まれていく音を聞きながら、ふと視線を上げて周囲を観察してみる。
そんなふうに、ただの休憩や給油の時間も「美しい光を探す余白」に変えてしまうと、道中のすべてが愛おしい記録になっていきます。
焦って目的地へ向かっていると見逃してしまう、人工物と自然の光が織りなすひそやかなコントラストですね。
スピードメーターよりも景色を眺めて。風景を味わうための速度
自分の感覚に合ったルートを選ぶと、自然と走るペースも落ちていきます。
速く走るための排気量や、遠くへ行くための重厚な装備よりも、私がバイクに求めているのは「風景を味わうための速度」を心地よく保てることなのだと、最近よく感じます。
時速30キロや40キロというゆっくりとしたスピードで走っているとき、風の音に混じって鳥のさえずりが聞こえたり、どこかの家から夕飯のいい匂いが漂ってきたりします。
それは、まるで自転車で散歩しているような、とても温かくて人間らしい速度です。
もし、今の愛車が低速で走ることに窮屈さを感じさせたり、無意識のうちにスピードを出すよう急かしてくるように感じるのなら。
もっと自分の呼吸に合う、身軽で穏やかな車両を見つめ直してみるのも、ひとつの選択かもしれません。
風景と調和しながら走る時間は、何にも代えがたいリセットの時間になりますから。
